ある日、美容院に行きたかった私だが、あいにくその日は
いつも行く美容院が休みだった。
それで、いつもと違う美容院に足を運んだ
感じのいいモダンな50代の主婦、という様子の
美容師さんが髪をカットしてくれた。
その美容師さんは、近くのマンションに住んでいるらしかった。
私は試しに聞いてみた。
「お宅のマンションでは騒音問題なんかはありませんか?」
美容師さんは答えた。
「生活音が多少あるけど、気になりませんねえ」
続けて美容師さんは言った。
「そういえば11階のおじいさんが、音がウルサイって、上階と喧嘩して、別のマンションに移りましたよ」
「音を気にするんなら、集合住宅に住まなければいい、って
皆で言っているんですよ」
私は別に反論はしなかった。
これが世間の一般的な反応なのだ。
上から聞こえてくる非常識な足音、とか、楽器の音とか、
子供の叫び声とか、ドアの開閉の音とか、犬の泣き声とか
そういうものがどんなに辛いか、人によっては精神を病むほどに辛いものだとか、経験をしない人にはわからないのだ。
私は近所の人に騒音の愚痴を言わないことにしている。
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どうせ理解してはもらえない。
理解してもらえないだけならまだしも、「あの人はクレーマーだ」
などと噂されるのが関の山だ。
私は最終的には引っ越しをしようと思っている。
だが、今はお金が足りない。
引っ越しができるようになるまで、私は上階の騒音に対して
ささやかな反撃をしながら暮らして行こうと思っている。